ACと被虐者の違いは?子をACにさせる要因は?

前回の続編です。

目次

虐待を受けて育った人(被虐待者)とACがどう異なるのか?

ACも被虐者も両者共に生きづらさを抱えており、その要因は育った環境にあることは共通です。但し彼らは心理発達の進度が異なります。

ACは、(乳児期⇨イヤイヤ期を乗り越えて)学童期までは発達しています。親との基本的な信頼関係は築けており、自己愛も他者愛も育っています、0ではありません。そして喜怒哀楽を表現でき、自己主張もできます。ACは少なくとも2歳頃までは信頼できる保護者が側にいたはずです。

彼らが生き辛さを感じるのは思春期になる年齢以降がメインです。

一方、(0歳の頃から虐待されている)被虐者の心は乳児期で止まっています。との基本的な信頼関係が築けておらず、安心を感じたことがありません。喜怒哀楽を表すこともなく、自己主張することもない彼らにはイヤイヤ期は来ません。それ故、イヤイヤ期の先にある学童期まで心理発達していないのです。

彼らは産まれてからずっと生き辛さを抱えています。基本的に他人を恐れている為、子供らしさはなく、同年代の和に馴染めず、孤立し、虐められてしまうことも珍しくありません。心は産み落とされたばかりの赤子のように不安・恐怖・混乱で一杯の彼らは、アダルトチルドレンに対して、アダルトベイビーとも呼べる存在です。

軽度知的障がいや境界知能との違い

他責傾向で、自立しきれていない点、家族問題などでトラブルを起こしやすい点などは軽度知的障がい・境界知能とも似通っています。

しかし軽度知的障がい等が起こす問題は、ACのものよりも深刻な結果を招くことが多いです。ACの知能は正常なので、自責の視点に欠くものの、問題を論理的に捉えたり、相手に分かるように説明することもできます。一方知能が正常に届いていないと、根本的に問題を理解していなかったり、話が通じなかったり、話が二転三転します。問題に直面すると、他責の勢いがACよりも強く、感情のコントロールも圧倒的に不得意です。

育児に関しても、ACの心は学童期なので、心身ともに格下である乳幼児期の我が子への育児はやり遂げます。赤ちゃんに愛情を与え、情緒的な応答ができます。お世話も問題なくできます。

一方、正常知能に届いていない彼らは育児をやる・やらないというよりは育児能力に不足があります。乳幼児の欲求を満たしてあげることはできず、赤ちゃんに共感的に接することができないため、親子が精神的に繋がることがなく、安心を知らない赤ちゃんになります。それどころか身体的虐待やネグレクトに発展することも決して珍しくありません。

どんな人がACになりやすいか?

ACになる原因は思春期を越えられないことだと書いてきました。

つまり子どもが思春期を乗り越える環境が整わないと、ACになりやすくなります。思春期の要は、親からの精神的な自立です。それには

親の価値観に従う気持ち(学童期の気持ち)親の価値観から自由になりたい気持ち(思春期の気持ち)ぶつかり合いが子供の中で起きることがまず第一。

そしてやがては後者が強まり、親への反抗を見せ、親と精神的に対峙することが第二です。

このステップを阻む環境だと、子は思春期を達成できません。例を見ていきましょう。

①親が過酷な問題を抱えている場合

父親が仕事をクビになった、不倫した、母親が姑からいじめられている、親が被虐者、兄妹が重い病や障害を負っている、など、親が大変な状況にいる時、子どもは「親に迷惑をかけてはいけない」、「親を支えないといけない」という気持ちが強まります。

そこで反抗期を迎えては親を余計に困らせることになるので、思春期を自分で封じ込めてしまいます。

自分のしたい事や親への健全な怒りを抑圧して、親自身が抱える我慢を子も抱え、いい子を演じ続ける、学童期の心に無理やり居続けようとするため、いざ年齢的な成人になると、大人になりきれない不完全感や親に本心をぶつけられなかった不満、未練が残ります。

②学童期以降に虐待やいじめを受けた場合

小学生以降になって親が離婚し、再婚相手から虐待されたり、小学生以降で学校でいじめに遭う。などがあり、それを誰からも守られずにいると、子は思春期を乗り越える余裕ができません。専念せざるを得ない問題が他にあるからです。

思春期は学童期までの生き方vsこれからの新しい生き方の対決であり、そして親との対決です。健全な「怒り」のパワーが原動力となります。怒ってばかりいると疲れることからも分かる通り、怒りはエネルギーが必要です。思春期は、怒りを放出できるくらいの余力が必要ですから、虐待環境下では、思春期はそもそも起きなかったり、思春期が問題化したりします。0歳児から虐待を受けている人と違って、自分が虐待を受けていることに気づきもしないということまではいかなくとも、被虐者とACの両側面を持つようになります。

③親がアダルトチルドレン

親が成人期の場合は、子の思春期に向き合い、子の価値観に賛同する(「確かにあなたの考えも一理あるかもね。」)か

賛同しない(「もういい、勝手にしなさい!」)かは関係なく、子の主張に耳を貸すので、子は「自分の価値観を親にぶつけられた」と満足し、やがて子の思春期は達成されます。

また成人期の親の「勝手にやりなさい!」の背景には、「(そんなやり方ではうまく行かないと思うけど)試してみなさい。」ということであり、賛同できずとも子の価値観を容認しています。そして陰では子を見守り、いざとなったら助ける準備もしています。

一方、親がACの場合だと、子が怒りを出そうとしても、親は子と向き合おうとせず、面倒くさがって逃げたり、怖がって避けたり、無関心だったりで、子の怒りは向き場を失います。

思春期が頓挫して学童期のいい子に戻ろうとしてしまうストレスで、摂食障害となったり、思春期が拗れて問題化していき、不登校や家庭内暴力に発展する事があります。

最後までブログをお読み頂き、本当にありがとうございます。もし少しでも参考になったと思っていただけた場合は、バナーをクリック頂けると、ブログ更新の励みになります。では、また次回の記事でお会いしましょう。

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