ACに関する一連の記事は一旦今回でおしまいです。前回記事はこちら。
これまで、ACになる原因は「思春期を乗り越えられなかったこと」だと書いてきました。
逆に言えば、AC脱却とは、本人が再び思春期を呼び起こし、乗り越えることです。
言葉で書くのは容易いですが、もちろん実際はとても難しいことです。
まずAC脱却には、AC自身の年齢がなるべく若い方が進みやすいです。ACとしての生き方が長期間固定されていないからです。
そして、完全に自力で乗り越えるのは不可能とまでは言いませんが、かなり困難なので、カウンセリングの補助が必要になります。しかも親子両方のカウンセリングです。
筆者の師事する高橋医師によれば、
(生き方が親から自立している)成人期であれば心の問題の解決には、成人期本人だけカウンセリングすればよく、
(親の生き方に従っている)学童期の心の問題には、親のカウンセリングだけで解決したりするのですが、
(生き方が親半分・自分半分の)思春期の問題は、親子両方のカウンセリングが必要になるとのことです。
つまりACがもう一度思春期を乗り越えるには、思春期の子同様に、親子のカウンセリングが必要なのです。
具体的に見ていきましょう。
思春期を呼び起こす
前回記事で思春期が起きる大まかなステップは
①親の価値観に従う気持ち(学童期の気持ち)と親の価値観から自由になりたい気持ち(思春期の気持ち)のぶつかり合いが子供の中で起きる。
②そしてやがては後者が強まり、親への反抗を見せ、親と精神的に対峙する。
と書きました。つまり最初のステップは
親の価値観に従う気持ち=親の言い付けを守っていたい気持ち、親に褒められたい気持ち、親に歯向かうのが怖い気持ち、ずっと子供で居続けたい気持ちが自分にあるんだという事に気づく事です。
そして、そうでありながらも、
親の価値観から自由になりたい気持ちにも気づく必要があります。どんなに最高な親で、どれほど親を愛していても、親の意思と自分の意思が100%一致するという事はありません。必ずどこかに不一致があり、「自分は本当はこうしたい」といった欲求があります。
ACの人自身も封印し忘れてしまっていた、あるいは気づいていなかった気持ちを、カウンセラーが傾聴※することで、本人が気づくに至ります。(※カウンセラーが思春期を呼び起こすように積極的に誘導し、無理やり親への怒りを引き出そうとすると失敗するので、あくまで傾聴のみ。)
この相反する両方の気持ちに気づいた時、堅く閉ざされていた思春期の扉が再び開くのです。
親と対峙する
ステップ2が、親との対峙です。この時、親側も対峙する準備が整っていなければなりません。せっかくACの人が親への反抗心に気づいて対峙しようとしても、一度目の思春期の様に、親の方が向き合おうとしなければ、また思春期は失敗に終わってしまうからです。
最初の思春期で、なぜ親が子の思春期と対峙できなかったのか。それは親側にも心の問題があったからでしょう。子の怒りは親の生き方への怒りです。親が自分の生き方に向き合えないならば、子の怒りにも向き合えません。親の心の問題、そして生き方は、子よりも当然長く固定されてしまっていますから、カウンセラーはより高い技術を必要とします。親が自分の心の問題・矛盾・違和感に気づいた時、親は我が子の苦しみに気づく事ができます。
親に気づいてもらえて初めて、親子は二人三脚で思春期の扉へ向かって歩いていきます。
子が親に自分の価値観をぶつけ、親は逃げずに子供の話を聴き、応える。賛成しようと、反対しようと、親は我が子を一人の大人として、その生き方を持った我が子を認める。
親からすれば
「あぁ、あの子は、ずっと私に気づいてほしかったんだ。随分、付き合わせちゃったな。」
「もう子供じゃないんだな。」
子からすれば
「やっと気づいてもらえた。やっと本当の自分を見てくれた。」「もう親のせいばかりにしてられないな。」
「母さんも母さんで、大変だったんだな。」
これが思春期の終着点です。
さいごに
「遅れて来た思春期」という言葉で濁されることもありますが、思春期は遅れて来たからこそ、真剣に向き合わなければいけません。またとない大切な時期を、茶化したり、腫れ物を扱うように接したり、逃げたりすれば、我が子の怒りは行き場を失い、やがて力なく消えてしまったかと思えば、予期せぬ方向に向かってしまうこともあります。親の狭い価値観に縛られ、子が大人になってもお互い依存しあう親子関係に陥ってしまう前に、子供の思春期にはとことん付き合ってやりたいものです。
思春期問題へのカウンセリングにご関心がある方は、下記の本をお勧めしたいと思います。具体的な事例を交えて、思春期問題の好ましいカウンセリングとはどんなものなのか、どんな経過を辿るのか、イメージが湧くと思います。
最後までブログをお読み頂き、本当にありがとうございます。もし少しでも参考になったと思っていただけた場合は、バナーをクリック頂けると、ブログ更新の励みになります。では、また次回の記事でお会いしましょう。
にほんブログ村
コメント