児童虐待の裏に隠れる知能の問題.

本ブログに足を止めてくださり、有難うございます。この記事では、「軽度知的障がい」や「境界知能(ボーダー)」等への言及があります。こちらの記事をご覧いただくにあたっては事前に下記の記事をご覧いただくようお願い申し上げます。

目次

親である以上、〇〇はあるという思い込み

児童虐待は、「親が暴力的な性格だった」とか「親自身も生き辛さを感じていた」など、親の性格や親自身の育った環境、あるいは「孤独な子育て」などが原因として指摘されることが多いです。

それらが的外れという訳ではないのですが、「親自身の知能の問題」という視点が欠如していることに注意が必要です。

子育てにおける知的障がいの問題は、「子供が発達障害や知的障がいで育てにくい」といった「子供側の問題」については取り上げられているものの、「親の知的障がい」についてはなぜか全くと言っていいほど焦点が当たりません。

「親である以上、知能が正常」だと錯覚されているか、知能に問題はあっても、母性には影響しない。母性はうまれつきあるものだという強い思い込みがあります。

親自身が虐待を受けていた、つまり「被虐ママ」による虐待など、別の要因を理由とする虐待に関しては後日書くとして、今回は引き続き、児童虐待の裏に隠れる知能の問題について書いていきます。

尚、本記事は前回の続編となります。

児童虐待で問題になるIQ群は?

「知的障がい」が児童虐待で問題になるのは多くが「軽度知的障がい」と「境界知能」です。

意外なことに、知的障がいの中でもIQが高い軽度の知的障がいの人たちと、知的障がいには分類されないIQを持つ境界知能の人たちの方が、より重い知的障害の人とたちと比べて児童虐待の現場では問題化しやすいという特徴があります。

ここでいう問題化とは虐待が起こっているのに表面化しにくい、そしてこじれやすいということです。それには、このIQ群の人たちは、一見自立した普通の大人のように見えることが多く、周りから知的障がいを認識されにくいことが一因にあります。子供の状況がかなり悪化するまで気づかれないことも多々あります。

一方、中度より重い障がいの方が児童虐待の加害者としてあまり登場しないのは、身近に介助・介護している人がいることが多く、妊娠の機会がそもそも少なかったり、あるいは妊娠しても乳児院等へ託されるなど何らか介入され、母子だけの環境で育児することが少ないからです。

裏を返せば、中度より重い障がいの方の場合、介入や支援がなければ、「妊婦検診の未受診」「トイレへの産み落とし」「ネグレクト」等が高い確率で起こります。

さて、前回の記事では、「軽度知的障がい」と「境界知能」の特性を分けずに記載していましたので、本記事では両者の知能の違いが、児童虐待ではどう影響しているのかを書いていきます。

軽度知的障がい(IQ50~70)

まずは、軽度知的障がい(IQ50~70)の人たちです。彼らの印象としては身なりはきちんとしている一方で

気分がコロコロと変わりやすい」

「思い通りにならない場面では激昂、激情する」

一方「第三者との対人関係では一見おとなしい」などです。

また、相手から何か説明を受ければ、はいはいと頷くため一見理解が良いように見えるが、実際は殆ど理解していなかった、ということもしばしばあります。

また「相手に分かる説明」ができない、すぐばれる嘘をつく、など。

養育能力や家事能力はIQが50に近いほどに低く

  • レトルトや既製品、あるいは簡単で決まった料理しかできない。
  • 整理整頓ができず、ゴミ屋敷のようになりやすい。
  • トイレ・お風呂・ガス等の必需設備が故障しても放置する。
  • 計画もなく、年子で次々と子を出産する。
  • 子どもの予防接種や必要手続きができない。
  • 金銭管理ができない。子ども手当等のまとまったお金が入ればすぐに使ってしまう。
  • 買い物では必要量が把握できず、不用品を買ってしまう。
  • 子供の成長に合ったものを買い与えることができない。
  • 何か問題が起きても解決する能力はなく、放置してしまう。
  • 我が子の表情を読み取り、その痛みや喜びを「我が事のように」共感することができない。
  • 羞恥心に乏しく、モラル意識が低い。など

軽度知的障がい場合、介助が必要か必要でないかのギリギリのラインにいるので、中度の人と比べれば「自立した」一人暮らしができるかもしれませんが、子育てを行うのはかなり厳しいです。

常識内での子育てはまず不可能と言えるでしょう。初対面の人であれば彼らは普通の人と変わらないように見えますが、近隣の人や少し親しくなれば何か違和感を感じると思います。

軽度知的障がい者には「意地悪さ」や「わざと」「悪気」というものをあまり感じさせません。嫌がらせするにはある程度の知能が必要なので、「子が嫌がると分かって〇〇する」みたいなことは、境界知能と比較して少ないです。子が喜ぶことも嫌がることも、意図して行うというよりは、本人の気分のまま結果的に行われるにすぎず、子は混乱します。

彼らがおこしやすい虐待が、ネグレクト衝動的な暴力です。

赤ちゃんを清潔に保つ、異変に気づいたら病院に連れていく、授乳や離乳食を与えるなどの基本の育児が困難で、ネグレクトが起きやすくなります。

また、お風呂や車中への放置などによる「事故死」も、ネグレクトの延長で起きやすくなります。意図的にネグレクトするというよりは、能力の限界で必然的にネグレクトが起きます。

彼らなりの育児をしているのだと思いますが、客観的に言えばネグレクト、つまり虐待になってしまいます。

また、感情の起伏が激しく、イライラを抑えきれないため衝動的な暴力がおきやすいです。

0歳児の頭を強く揺さぶるなど、乳幼児の頭を損傷させて死亡させてしまうのが、彼らが行いやすい代表的な虐待の一つです。

境界知能(IQ70~85)

次に境界知能(IQ70~85)の人たちです。(ただし70台は、下記に書く事よりも、上記の「軽度知的障がい」の方があてはまりやすいかもしれません。下記で書くのはIQ80前後を想定しています。)

彼らの印象としては、「他人の悪口が多い」、「本人を前に躊躇のない暴言を言う」、「クレーマー」、「極度に自分勝手」、「感情の起伏が激しい」、「話がコロコロ変わる」、「時間や約束を守らない」などです。一方、「豪快な性格」、「型破りな性格」として、ある場面では好感されることもあります。

何かトラブルを起こした際、一貫して「相手が悪い」、「自分は大変だった」との主張が多いです。すぐばれる嘘をついたり、言った事を簡単に覆したりします。注意をされたと感じると強い敵意を示し、相手を威圧します。基本的に対人トラブルが絶えません。

養育能力は子供が乳児期は軽度知的障がいの場合よりは安定しており、

  • 妊婦検診や予防接種に行くこともできる。
  • しかし金銭管理は苦手で、お金に執着しやすい。
  • 保育園や学校では、マナーや常識を守らないことがしばしば。
  • 羞恥心に乏しく、モラル意識が低い。
  • 悪口やクレームが多い。
  • 子の痛みや喜びを「我が事のように」共感することができない。
  • 嫌がらせを行う。など

境界知能の人たちは、軽度知的障がいの人と比べると、生活能力は高いですから、近隣住民であっても彼らの特性に気づく人は少ないかもしれません。

しかしながら家の内側から見れば、やはり家事能力は正常知能の大人と比べてかなり低いです。(ただし、家事訓練を受けている場合は、まるで初めから家事能力に問題がないように見える。)

彼らがおこしやすい虐待は、「しつけと称した虐待」で、イヤイヤ期頃に始まりやすいです。

軽度知的障がいによる身体的虐待は、事故的だったり、感情の爆発的におこりますが、境界知能による虐待は、より執拗、残虐で、意図的に行われることが多いです。

虐待の手段は本当に様々で、機嫌が悪い時などはストレス発散的に、酷い虐待が起こります。子が大きくなるにつれ、身体的虐待から精神的虐待や性的虐待にシフトします。

「軽度知的障がい」と「境界知能」による虐待の割合

虐待の加害者は、「自身も被虐待経験をもつ親」や「統合失調症」、あるいは「正常知能だけれども、複合的な要因によるストレス」等、様々な分類がありますが、最も多いのが「軽度知的障がい」と「境界知能」です。

その割合は、信じがたいことに6~8割とも言われているのです。

児童虐待問題は、表面的には「孤育て」や「育児ノイローゼ」、「親の元々の暴力性」が原因として言われやすいですが、裏に知能の問題が隠れている場合があることを知る必要があります。

最後までブログをお読み頂き、本当にありがとうございます。もし少しでも参考になったと思っていただけた場合は、バナーをクリック頂けると、ブログ更新の励みになります。では、また次回の記事でお会いしましょう。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • こんにちわ。
    昔から子どもの問題に関心があり、最近里親登録に向けて進んでいる者です。
    虐待について勉強したくて、読ませて頂いてます。
    知的な問題が隠れているというのは、新しい視点でした。
    特徴として書かれてる項目で、学力的に全く問題はないけれど、特徴として当てはまる場合もありますよね。
    その場合は、被虐児であったり、ストレスであったり、性質であったりということなんでしょうか。
    それにしても、6~8割ってすごいですね…。境界知能であるがゆえに、気づかれず、適切な支援を受けれず、生きづらさを抱えて虐待に向かうのでしょうか。

    • コメントありがとうございます。仰る通り、境界知能の人は、社会の支援対象外であり、社会のルールに適合しきれないので、何かしらの不満をもって生きていると思います。子育ての中でも、子育て外のことでも、その不満やストレスの矛先は弱い者に向かいます。
      お子さんが何らかの不適合をおこしている、根底の原因がどこかにあるはずです。それらが追々推察できるよう、今後も被虐児、被虐ママ、正常親も含め、更新していきますので、宜しければお立ち寄りください。

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