発達障害と間違われやすい被虐者

虐待を受けて育った子供や、虐待サバイバーの大人たちが、いわゆる「発達障害」と誤診されることがあります。虐待を受けて育つと、先天的な脳の障害を持っていなくても、ほぼ避けられない確率で発達障害に似た症状が現れる場合があります。

今日は、被虐者のどのような特徴が発達障害と誤診されやすいのか、について書いていきます。

さっそく例を挙げていきます。

・言葉の発達が遅い

⇒通常母親が赤ちゃんに掛けるであろう声掛けがほとんどない場合、言語の発達が刺激されず、言葉の発達が遅くなることがあります。ただし、被虐者の言葉の発達の遅れは、適切な養育を受けることで急速に遅れを取り戻します。

・言葉を理解していない(ように見える)

虐待が起きる家庭では、言葉が機能しなかったり、通常の意味と異なった意味で使用されたり、不適切な声掛けをする場合が多々あります。

「言葉が機能しない」とは例えば、「助けて」「ごめんなさい」といった言葉を言っても、助けてもらえないし、許してもらえないのですから、発する意味のない言葉になります。

また「通常の意味と異なる」とは、例えば

「夕ごはん」という言葉が、虐待家庭では「殴られたり責められながら無理やり食べさせられる時間」であったり、

「お休みの日」という言葉が、虐待家庭では「暴力する父が一日中家にいる日」であったり、「自分だけ置いていかれる日」であったりする一方で、普通の子どもにとっては基本的に「夕ごはん」も「お休みの日」も「楽しい時間」という意味合いだったりします。

このように、普通の人たちが発する言葉の意味合いと、被虐者がそれを聞いて思い浮かべる意味合いとが異なりすぎていて、お互いが言っていることが理解できない、なんとなく通じ合わない、受け答えが「ちぐはぐ」にみえるといった場面が多々あるために、まるで「受け答えが苦手という事は、発達障害か何かなのか?」と勘違いされてしまいます。

・学力が低い

⇒虐待家庭の中では、勉強に集中できる余裕がなかったり、

過度な緊張とストレス、睡眠不足などで学校の授業を寝てしまったり

勉強への意欲(将来への希望)が低くなってしまったり

習い事を受けさせてくれない、あるいは無理やり受けさせられる、ということがあります。こうしたことから被虐者の学力は低く抑えられてしまう傾向にあります。

・友達付き合いができない。

⇒暴言暴力下で育った被虐者は基本的に人間を恐れていることが多いので、友達付き合いに非常に消極的に見えることがあります。これが例えば人間関係に関心の薄い「自閉症」のように見えてしまうことがあります。また、対等に扱われた経験がないと、同級生とも対等な関係を築くことができず、友達からの過度な要求に応えようとしたり、身を守るために凶暴になってしまったり、などのトラブルがおきることもあります。このように「少し普通とは違う子」扱いされてしまうことがあります。

・(上記とは逆で)なれなれしい

⇒ネグレクトや養育者がコロコロ変わるような環境で育つと、初対面の人にも、「なれなれしい」ように接近する特徴が現れることがあります。これは人間関係の距離感を理解できていない「ADHD」のように見えてしまう場合があります。

・集団行動ができない。挙動不審である。

⇒被虐者は、学校生活をするうえで必要な常識やルールを親から教わっていない事があります。何をすると怒られ、どのように行動すべきなのか、といったルールが、虐待家庭のものと、学校や社会の常識とで異なっていることも多々あります。

これにより、突発的な行動をしてしまったり、皆と同じようにできずに固まってしまったり、挙動不審になってしまうと、「落ち着きがない」「集団行動ができない」と見られ、「ADHDか自閉症ではないか?」と思われてしまう場合があります。

また発達障害とは別ですが、他の病気などと間違われる場合もあります。

・幻覚・妄想がある

フラッシュバックなどでパニックを起こしているのを、統合失調症や薬物による幻覚・妄想と誤られてしまう場合があります。

・痩せすぎている

虐待を受けて極度の緊張状態を強いられることで、食欲が抑圧されることがあります。また食に対するポジティブな思い出を持っていないことも多く、「これが食べたい」「これが好き」といった食べ物への関心が薄い場合もあります。こうした彼らの「食欲のなさ」や、そもそも食べ物を十分に与えられずに痩せすぎている点が、「拒食症」と誤られてしまう場合があります。拒食症は「太るのが怖い」という考えが強いのが特徴ですが、その気持ちを特に持っていない場合は拒食症ではありません。

話を発達障害に戻します。

発達障害は主に中枢神経系の障害で、生まれつきのものです。

本当に発達障害を持っている人が、大人になってから診断されることはあっても、それは症状が分かりにくかったり、学校生活等では表面化しなかったために子供の頃に気づかれなかっただけです。また、交通事故や虐待で実は脳が損傷していた、など脳が傷を負った場合は、後天的な障害として残ってしまいますが、それは先天的である発達障害とは別物です。いづれにせよ脳に障害を負った場合は、本人が進んで診断を受けに行くよりも、周りに連れていかれるケースの方が多いようです。

被虐者は虐待を受けて育ったために、「発達障害に似た症状」が現れた人は、「自分は発達障害なのではないか」と悩み、自ら診断を求めにくることが多いです。彼らの場合は治療やカウンセリング、適切な養育環境等で治癒し、「発達障害に見える症状」が出なくなる可能性が十分にあります。一方、本当の発達障害の場合、残念ですが障害がなくなることはありません。(ただし、早期から療育を受けることで、社会への適用能力を高めることはできますし、そうした訓練は本人や家族のQOL向上のために非常に望ましいものです。

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