虐待の内容は非常にさまざまある。身体的虐待、ネグレクト、心理的虐待、性的虐待──一般的にはこの4つに分類されるが、実際の現場で見えてくる虐待の内容は、実に様々であり、組み合わせも様々である。
では、虐待の形はランダムに決まるのか。親の「性格」で決まるのか。
どちらも、ある意味では違う。
親のIQレベル──認知機能の水準によって、起こりやすい虐待のパターンが驚くほど明確に分かれるという事実がある。IQ80の親とIQ60の親では、虐待の内容も、子どもとの関わり方も、支援者が感じる「困難さ」の質も、根本的に異なる。
本記事では、「児童虐待の裏に隠れる『知能の問題』」をさらに掘り下げ、IQレベルを10刻みで区切りながら、それぞれの水準でどのような虐待パターンが生じるのかを整理する。
なぜIQレベルで虐待パターンが変わるのか
虐待が止まらない根本的な理由は、母子間の「心の繋がり」の「不成立」に求めている。母子の間に心の繋がりが成立していれば、母親は子の痛みを自分の痛みとして感じるため、暴力を振るい続けたり、空腹の子を放置したりすることはできない。心の繋がりが成立している家庭では、虐待は起きない。
では、なぜ心の繋がりが成立しないのか。ここに「知能の問題」が深く関わっている。
心の繋がりの成立には、親が子どもの表情や行動から心理状態を読み取り、それに応じた関わりを返すという「相互的なやりとり」が必要になる。この力──他者の思考・感情・体験を認識する力──は、IQレベルに大きく左右される。
児童相談所が関わる虐待事例の大半が「軽度」知的能力障害および境界知能で占められているという。これは虐待の背景にある認知機能の問題がいかに大きいかを物語っている。
そしてここが重要なのだが、同じ「軽度」知的能力障害でも、IQ70の親とIQ55の親では、生活能力も対人関係の質も、したがって虐待の形態もまるで違う。10刻みで見ていくことで、この違いが鮮明になる。
IQレベル別──虐待パターンの実際
IQ80前後(境界知能)── 「しつけ」の名のもとに
対人関係の印象:積極的で一方的。自信たっぷりに見える。少し背伸びしたような、自分を大きく見せようとする言動が目立つ。
IQ80前後の境界知能は、日常生活ではほとんど問題が見えない。身の回りのことは自立しており、仕事もこなせる。会話も普通に成立するように見える。しかし、じっくりと話の内容を聞いていくと、自分中心で、相手の立場をまったく考慮していないことが分かってくる。
このIQ帯の大きな特徴は、「自分はちゃんとできている」という強い自負を持っていることである。プライドが高く、間違いを指摘されると激昂する。自分のやり方を否定されることに極端に弱く、相手を見下すような言動をとることで自分の立場を守ろうとする。
たとえば市役所の窓口で、児童福祉の担当者から養育について助言を受けた場面を想像してほしい。知的に問題のない親であれば、仮に耳が痛い指摘であっても「そうですか、気をつけます」と受け止められる。しかしIQ80前後の親は、助言の内容ではなく「自分が否定された」という感覚に支配される。「あなたに何が分かるんですか」「うちの子のことは私が一番分かっている」と声を荒らげ、時には「上の人を出してください」と要求をエスカレートさせる。自分が正しいと確信しているがゆえに、修正がきかない。こうしたクレーマー的行動が、学校や行政の現場で繰り返される。
この水準の親に特徴的なのは、「しつけ」と称した継続的な心理的・身体的虐待である。
IQ80前後の親は、社会的なルールを表面的には理解している。「子どもにはきちんとした教育をしなければならない」「言うことを聞かない子は叱らなければならない」という社会常識は持っている。しかし、子どもの内面を推測する力が欠けているため、子どもが泣いている理由、反抗している意味を読み取れない。結果として、一方的に「正しさ」を押しつける形の虐待が起こる。
注目すべきは、虐待が表面化する時期である。IQ80の親は、乳児期の育児は比較的安定していることが多い。授乳やオムツ交換といった「やるべきことが明確な」ルーティンはこなせる。問題が顕在化するのは、子どもが1歳半〜2歳の「イヤイヤ期」に入ってからである。
子どもが自己主張を始め、「イヤ」と言い、思い通りにならない場面が増える。知的に問題のない親であれば「反抗期は成長の証」と理解し、受け流すことができる。しかしIQ80の親にとって、子どもの反抗は「自分への否定」と映る。プライドが高いがゆえに、幼い子どもの「イヤ」にすら傷つき、怒りが湧く。ここから「言うことを聞かせなければ」という名目のもと、しつけと称した虐待が徐々にエスカレートしていく。
代理ミュンヒハウゼン症候群のような、周囲から見えにくい形の虐待が生じることもこのIQ帯の特徴である。
連日テレビで取り上げられるような、長期にわたる苛烈な虐待事件──子どもが衰弱するまで暴力やネグレクトが続けられ、最悪の結末を迎えるような事件──は、多くの場合このIQ80前後の親によるものである。なぜなら、IQ80の親は「しつけ」の延長として虐待を正当化できるだけの知能を持ち、かつ外面を取り繕う力もあるため、周囲に発覚しないまま長期間にわたって虐待が継続するからである。IQ60の暴発的な暴力とは異なり、計画性すら帯びた執拗さがこのIQ帯の虐待の恐ろしさである。
起こりやすい虐待の形:継続的かつ執拗な身体的・心理的虐待(「しつけ」名目)、代理ミュンヒハウゼン症候群、長期化・苛烈化しやすい


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