児童虐待のニュースで「母親は事前に役所に相談していた」というフレーズを聞くことがあります。一方で、虐待が発覚するまで一切相談しなかった親もいます。
「虐待してしまいそうだ」とSOSを出せる親と、出さない親——この違いはどこにあるのでしょうか。
この記事では、「悩み」と「不適応」の違いという視点から、相談できる親とできない親を分けるメカニズムを解説します。
第1章 仕事で「悩む人」と「不適応を起こす人」の違い
虐待の話に入る前に、まず仕事の場面で考えてみましょう。ある職場に、どちらも仕事がうまくいっていないAさんとBさんがいます。遅刻やミスが多く、同僚はフォローに追われています。しかし、同僚たちの二人を見る目はまったく異なりました。
Aさんは朝起きるのが辛く、説明を受けても頭にモヤがかかったように内容が入ってきません。ミスをすればビクビクしながら上司に報告し、「同僚に迷惑をかけて申し訳ない」「社会人失格だ」と深く悩みます。
一方Bさんは、深夜までゲームをして朝起きられず、遅刻しそうでもコンビニに寄って出社します。ミスをしても放置し、バレて注意されると「そんな説明は受けていない」と言い返します。同僚にフォローされている自覚はなく、いつも人のせいです。
二人とも知人に「仕事で悩んでいる」とこぼしていましたが、専門的に言えばBさんは悩んでいるのではなく「不適応を起こしている」のです。
第2章 「悩み」と「不適応」を分けるもの=葛藤
AさんとBさんの違い、お気づきでしょうか。日常的な言い方では2人とも「仕事に悩んでいる」ことになります。しかし専門的に見ると、Bさんは「悩んでいる」のではなく「不適応を起こしている」と表現されます。
「悩み」と「不適応」を分けるもの、それは葛藤の有無です。葛藤とは、相反する2つの気持ちの戦い——つまり心の揺れ動きのことです。
Aさんの中には、①「仕事はきちんとやらなければいけない、同僚に迷惑を掛けたくない」という義務感と、②「仕事がしんどい、行きたくない」という本心がぶつかり合っています。①を守れていない自分に罪悪感が生まれ、苦しみます。これが「悩み」です。私たちの多くが、大なり小なり経験したことのある心の動きでしょう。
一方Bさんには、②の「しんどい、やりたくない」はあっても、①の義務感がほとんどありません。ミスを報告せず放置し、同僚のフォローにも気づかない——それは①が限りなくゼロに近いからです。①がなければ葛藤は生まれず、葛藤がなければ罪悪感も生まれません。
周囲の同僚たちは、2人の態度や表情からこの違いを敏感に感じ取ります。「2人ともフォローが必要なのは同じだけど、Bさんのあの態度はなんなんだ」と。実際、悩んでいるのはBさん自身ではなく、周りの人たちなのです。
第3章 相談しない母親に葛藤がない理由
SOSを出す母親と出さない母親の違いは、情報量でも意志の強さでもない。葛藤があるかどうかだ。そしてその葛藤は、ある心理的な条件がないと生まれない。
SOSを出す母親と出さない母親の違いは、情報量でも意志の強さでもない。葛藤があるかどうかだ。そしてその葛藤は、ある心理的な条件がないと生まれない。








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