感情の抑圧には「深さ」がある──4つのゾーンで育った人たちの違い

誰もが、いつからか、感情を抑圧しながら生きています。しかし、「どんな感情を」「どのくらいの深さまで抑圧するのか」は、育った環境によって大きく異なります。

 

前の記事で紹介した4つのゾーン──①欧米型家庭②日本型家庭③毒親家庭④虐待家庭のどこで育ったかによって、感情を抑圧する深さも、抑圧している内容も、まったく違います。

目次

人間は誰もが「健全に育つポテンシャル」を持って生まれてくる

脳に機能的な障害がない限り、人間の赤ちゃんは「心が健全に育つポテンシャル」を持って生まれてきます。

ここで言う「心が健全に育つ」とは、自分のことも他者のことも信頼し、大切にできる心のことです。赤ちゃんは、そのポテンシャルを邪魔されなければ、自然に心が育っていきます。

①欧米型家庭・②日本型家庭のゾーンで育った人たちは、そのポテンシャルを発揮できた人たちです。③毒親家庭・④虐待家庭のゾーンで育った人たちは、成長の過程で感情が抑圧されすぎた結果、自己肯定感が十分に育たなかった人たちです。

①欧米型家庭・②日本型家庭の抑圧──砂をかける程度の深さ

感情の抑圧は、どんな人でもやっています。①欧米型家庭や②日本型家庭の人が行う日常的な抑圧は、たとえば次のようなものです。

もっと寝たいけれど遅刻しそうだから起きる。

お寿司が食べたいけれど今月は余裕がないのでおにぎりにする。

苦手な人がいるけれど仕事だから最低限の付き合いはする。

納得できないことで怒られても事を荒立てたくないから黙っておく。

こうした抑圧の特徴は、一時的であることです。

抑圧すべき感情にサッと砂をかける程度で、すぐに掘り起こせます。

週末に思う存分眠ったり、翌月にお寿司を食べに行ったり、嫌な上司の話を飲み会のネタにしたり、親しい人に愚痴ったりと、抑圧したものをすぐに解放します。

また、人から共感され肯定された経験を多く持つ彼らは、自分の感情を打ち明けることをためらいません。たとえ社会的に好ましくない感情であっても、ぶつけられる相手がいるため、負の感情もすぐに抑圧から解放されます。

ただし、①欧米型家庭・②日本型家庭の人であっても、いじめや大切な人の喪失、事故など非日常的な出来事が起きた場合は抑圧が深くなり、うつなどを発症することがあります。

③毒親家庭の抑圧──掘り起こせない深さまで

③毒親家庭で育った人の抑圧は、①②(欧米型・日本型家庭)とは質が異なります。

やりたいことを認めてもらえないから我慢する。

精一杯頑張っても決して認めてもらえない。

謝ってほしい、お礼を言ってほしい──そう思う自分は心が狭いのかもしれない。

否定の威力が①欧米型・②日本型家庭の否定よりもずっと大きいため、本当の気持ちを地中深くに埋めてしまいます。簡単には掘り起こせない深さまで、しっかりと埋めます。

気持ちを共感された経験が少ないため、打ち明けても分かってもらえないと感じており、人になかなか打ち明けられません。悔しさや怒りを発散する場所が見つかりません。

ただ、③毒親家庭で育った人には自己肯定感が少しはあります。歪んだ形であれ、少量であれ、親の愛を受けており、また親以外の人に大切にされた経験や、過去に普通の親の愛を受けた時期があれば、その分だけ自己肯定感は育ちます。

自己肯定感が少しでもあることで、不当な扱いを受けたとき「これは理不尽だ」と気づき、怒りを感じることができます。これが④虐待家庭で育った人との大きな違いです。

④虐待家庭の抑圧──蓋がしまって、鍵がかかる

④虐待家庭で育った人は、自己肯定感がほとんどないまま、肉体だけが成長してきた人たちです。

彼らが抑圧しているのは「恐怖」の感情です。

見捨てられる恐怖、殺される恐怖を、ものすごい力で抑え込んでいます。それを他人に打ち明けることも恐怖であるため、まず人に話しません。

そもそも、自分の気持ちが誰かに伝わるということがありうる──ということ自体を知りません。

心の底にある頑丈な箱に恐怖は吸い込まれていき、蓋がバタンと閉まって施錠されます。

それは無意識に行われており、恐怖を抑圧していること自体に、本人さえ気づいていません。

恐怖は、あらゆる感情の中で最も厄介です。

怖かった経験は他のどんな経験よりも、脳に深く刻み込まれます。恐怖を感じた場面で、人は普通「怖い」と口に出したり叫んだりして恐怖を外に逃がそうとします。

ところが④虐待家庭で育った人は、恐怖を口に出すと殺される・見捨てられると感じているため、恐怖を外に出すことができません。抑圧し続けるしかないのです。

自己肯定感が全くないと、不当なことをされても不当だと感じません。怒りの感情もほぼなく、諦めに近い感情で悲しく受け入れるだけです。

抑圧の「深さ」は、その人の弱さでも性格でもありません。育った環境が、その人の感情の「埋め方」を決めてきたのです。④虐待家庭で育った人が感情を取り戻せるようになるためには、意志の力ではなく、安全な環境と時間、そして信頼できる人との関係が必要になります。

 

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